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(2) 学ぶべき生命の機能
? 化学振動
均質な水溶液であるにもかかわらず、リズムやパターンが自発的に作り出される化学反応がある。これはソ連の生物物理学者B.P.Belousovが1951年に発見した現象である。呼吸に関連したエネルギー代謝で作用する反応としてクエン酸回路と呼ばれるメカニズムがある。これは生物が取り入れた糖や脂肪を分解し、酸化反応によりATPを合成していく有機酸の反応を指す。
Belousovは、クエン酸を触媒を使って酸化する実験を進めるうちに反応液が酸化と還元を周期的に繰り返すことを見出した。この「化学反応がリズムを作り出す」ということは当時はかなり奇妙なこととして見られ、同じくソ連の化学者A.M.Zhabotinskyの追試実験によって初めて世に受け入れられることとなった。2人の名をとってBelousov−Zhabotinsky反応(B−Z反応)と呼ばれる。
図4−36に示すように、B−Z反応は撹拌で均一な溶液に保てば数10秒の周期で溶液全体の色が変わる。また、これをペトリ皿などに静置すれば、同心円状のバンド構造が生まれる。この現象は、プリゴジンらの散逸構造の研究に重要な役割を果たしたばかりでなく心臓細胞や筋肉組織に見られるリズム現象の解析化学反応が空間的に協同するモデルとして応用されている(吉川,1992;Winfree,1990)。

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図4−36 Belousov−Zhabotinsky反応に見られる化学振動(吉川,1992)

 

 

 

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